クリスマス・ラプソディー 定番のクリスマスソングがお店の有線から流れてくる。街も華やかなイルミネーションで煌めいてて、自然と顔が綻ぶのがわかる。 道行く人々もこの聖なる夜を思い思いに楽しんでいる。なのに… 「どーして聞き込みしなきゃなんねーの!」 クリスマスなのに、クリスマスなのに!! 「こんな可愛い女の子と一緒で光栄でしょ?」 「ウメコぉ…自分で言うか、普通」 世間がクリスマスで浮かれているっていうのに、オレは傷害で指名手配になってるアリエナイザーを追っている。 「だいたいこんな時期に事件起こすなっつーの!」 「ほら、さっさと回って戻ろ!」 ジャスミンがケーキ買ってくるってーv と騒ぐウメコにつられたわけじゃないけど… 「よっしゃーッ!サクサクッと終わらせましょ」 相棒が聞いたら「真面目にやれ!」って小言言われそうなセリフを吐いてハンドルを握り直した。 聞き込みの結果は…芳しくない。変装を得意とするため目撃情報はどれもまちまちだった。 「バン、ウメコ。一旦戻れ」 ライセンスから響くボスの声に力無く応え、マシンブルを地球署に走らせた。あーぁ、せっかくのイブがもうすぐ終わっちゃうよ。 「おかえり、どうだった?」 「ぜーんぜん駄目。暗中模索、五里霧中」 マグカップから暖をとりながらデスクに突っ伏すと、おつかれさん、髪をわしゃわしゃっと撫でられた。ガキ扱いかよ、センちゃん。 「まぁまぁ落ち込みなさんなって。明日は明日の風が吹くよ、バーンちゃん」 同じくよしよしと乱れた髪を撫で梳かすようにジャスミンがあやす。…ちぇっ、お母さん気取りだよな、これって。 「そういえばジャスミン…」 ん?と彼女が振り向いた瞬間。 「パーティーしよー♪」 明るい声とともに風呂上がりのウメコが飛び込んで来た。人に報告押し付けてやっぱり…。今更怒るつもりもないけどさ。 すでにアシスタントと化しているテツが両手いっぱいの料理を運び、「なんで俺が…」とブツブツ文句垂れながら相棒が飲み物とケーキの箱を持ってきた。 ウチは女性のが強いらしい。スワンさんの指揮の元、ちゃくちゃくとパーティーの準備が調えられた。 もちろんオレもツリーのセッティングを任され、電球をたくさん付けすぎて怒られた。…ピカピカ光ってキレイなのに。 「クリスマスだというのに遅くまでご苦労。ささやかなパーティーですまんが…」 ボスが何か口上を述べてたけど、オレの意識はもう料理にターゲットロックオン☆ 乾杯と同時にシャンパン(だと思ったらお子様シャンメリーだった)を飲み干しがっつき始めた。 ケーキもチキンもサラダもスープもたらふく食べて、すっげー満足。 後半誰かが持ち込んだアルコールが回ったらしく、ふわふわぽかぽか気持ちいい。 気付けばジャスミンとウメコが寄り添うように眠り、相棒はセンちゃん相手に管を巻いている。テツは…と床で大の字になって高いびき。 へへ、みぃんな酒弱いんじゃん。 オレはふらふらと立ち上がって、坐り心地バツグンのボスの椅子に座って… ん…固い…? 「どうした、こんなトコロで。積極的じゃないか」 耳朶に直接吹きかけるような囁きに一気に目が醒めた。 「ボ…ッ、むぐっ」 大声を上げそうになる俺の口を大きな手が遮る。 「セン達に気付かれるぞ」 ことさら低い声。ボスの声ってズリぃよ。…なんつーか逆らえない。逆らうつもりもないけどさ。 コクコク頷くとようやく開放されて…その手はしっかりオレの腰を抱き抱えていた。 「…あのぉ…手、離してもいいッスよ?」 下りれないッス、と唇を尖らせればさらに腕の力が強くなった。…わかりましたよーだ。 素直に凭れかかり目を閉じる。 「眠いのか?」 問われる言葉に緩く首を振って答えつつ、ちょっと身体を捩って胸元に顔を埋める。今日くらい甘えてもいいよな? 抱きしめられて髪を撫でられてうっとりとしてしまう。ボスの体温が、頬に伝わる鼓動が気持ちいいから。ついうとうとしちゃったんだよ。そしたら、 ペロン ほっぺに生暖かい感触。 バッと目を見開くと至近距離にボスの顔があって、心臓が飛び上がった。 「な、なにす…ッ!」 今度は唇の端を舐められて。すっかりパニック状態。 だ、だってセンちゃんや相棒もいるんだぜ! 「やっぱり甘いな」 クゥ、とちょっと情けない鳴き声とともに苦笑しているが何の話かわからない。 それを察したのか、ボスがコンソールの脇に置いてあったケーキを手繰りよせ、器用に手袋を外し生クリームを掬う。 「ここと…ここに付いてたぞ、クリームが」 クリームの付いた指で再びその場所を汚されて舐められて。調子にのったボスはわたわた暴れるオレの唇に指を含ませる。 「…んむっ…ん…、ぅん…」 蹂躙するように蠢く指。上あごを擽ったり、舌を弄んだり。いいようにされるのも悔しいから、軽く歯を立てて抗議するとすんなり撤退していく。 …引き際よすぎじゃねぇ? 「物足りないか?」 見透かしたように笑うボスにイーッだ!ってやったらますます肩を震わせて笑い出した。 ムカつくー! 拘束する腕を無理やり剥がすとボスの膝の上から降りて自分の部屋に戻った。 ぷりぷり怒ってドアを閉めたすぐ後、来訪を告げるチャイムが鳴る。 …出てやんないもん。 ベッドに寝転がって枕をバシバシ叩いて憂さ晴らし。 しかし何度もなるチャイムにとうとう根負けしてしまった。…怒ってるのだって本当にイヤなんじゃなくて恥ずかしいだけだし。 僅かにドアを開けて睨みつけるように見上げれば。 「すまなかった。…コレ」 差し出された袋。クリスマス仕様のラッピングはどれだけ鈍いオレだってわかる。これがクリスマスプレゼントだって。 「メリークリスマス」 渡すだけ渡してさっさと戻ろうとするボスのコートを引っぱって… 「お茶…っ…飲んでいかないッスか?」 だ〜〜〜ッ!何言ってんだ、オレ!!まずはお礼だろ!!それに今引き止めるってことは…なんか誘ってるみてぇじゃん! でも今更出た言葉は撤回できなくて。開き直るように扉を全開にした。 「…もうちょっとキレイに片付けられんのか」 座るところがないからベッドに腰掛けてもらってる状態だから反論もできない。 「すんませーん…。でもこの方がどこに何があるかわかるンスよ」 「そのうち書類無くしたと言っても許してやらんぞ」 「いいですよーだ」 はい、とマグカップをボスに渡し、自分はベッドの下に座れるだけのスペースを作って腰を下ろす。 手にはさっき貰ったプレゼント。 「これ、ホントありがとうございます。開けていいッスか?」 もちろんだ、と頷くボスの前でいそいそと開ける。赤い袋からは白く小さな包み。…神社?…お守り? 「あらゆる災厄から護ってくれるようにな。いざって時はもちろん俺が護ってやるが…こんな心配かけるヤツは初めてだ…」 ベッド下にいたオレを引きずりあげ、壊れ物を扱うようにそっと抱きしめてくるボスの肩口に額を押し付ける。 「ボス…でもクリスマスに神社のお守りって…なんか…変わってますよ」 照れ隠しになんか言わなきゃ落ち着かない。オレだって男だし刑事なんだから護られるのは本意じゃないけど、誰かに、ボスにそう思ってもらえるのは素直に嬉しくて。顔が緩むのが止められない。 「…そう言われると思った」 ごそごそとポケットからもう一つの包みを出し、オレの手に握らせる。今度は少し重みのある… 「気にいってくれればいいが」 身体を離して袋を開ければハードなデザインのシルバーアクセが入っていた。 「最近の若者の好みはわからん」 ぼそぼそ顔を逸らし呟くボスが可愛い。つかめっちゃ嬉しいんだけど!! 「ありがとうございます!!」 言葉じゃ言い尽くせないから。首に腕を回して尖った口先にキス。 よく考えたらオレからすんのって初めてだ、なんて思ってたらぎゅっと拘束が強くなって。あらら、と思う間に視界がひっくり返ってベッドに押し倒された。 「ボス?」 「可愛いことをしてくれる」 微かに細められた瞳は牡の本性を隠していない。この後の展開は聞くだけ野暮ってモンだよな。 「…オレ、プレゼント用意してないッスよ」 「…必要ない」 吐息で囁かれたら、オレはもう…。 静かに目を閉じ、のしかかるボスの逞しい体躯を受け止める……が。 ビーッ、ビーッ、ビーッ けたたましいサイレンに、オレもボスもピタッと止まってしまう。 『ポイント801で連続暴行のアリエナイザー出現!』 …マジで?いいタイミングじゃねぇか、こんちくしょーッ!! ぐったり脱力するボスの耳元で「さっさと片付けてきます」と笑いながら言って抜け出すと、さっき貰ったお守りとブレスを身につけた。 「これがあれば一騎当千、一網打尽ッ!」 ヨシッ!と気合いを入れ直し、まだオレのベッドでふて腐れてるボスに軽くキスをすると部屋を飛び出した。 待ってろ、アリエナイザー!せっかくのイイトコロを邪魔した罪も追加してデリートしてやる! そんなふうにオレがエキサイトしてる頃、地球署では…。 「どこ行ってたの、ドゥギー?」 「………すまん、遅くなった」 「…残念ね、せっかくラブラブのところを」 「?!…スワン、まさかお前…」 「覗いてなんてないわよ。ただドゥギーがなかなかこないから探しただけ。こういう時ライセンスって便利よね、発信器代わりになるし」 「それでなんで…」 「あら、知らないとでも思った?あなたがデスクに隠しておいたクリスマスプレゼント、買ってるの見ちゃったのよ。あのデザインならバンちゃんしかいないでしょ?でクリスマスの夜にバンちゃんの部屋にいれば…ねぇ」 「…スワン…」 「あら、応援するわよ?」 「結構だ」 「そぉ?私は味方につけておいた方が得だと思うけど」 「といってからかいたいだけだろう」 「失礼ね。ま、じゃじゃ馬馴らしがんばって、ドゥギー」 何も言えずボスが耳を垂らして撃沈していた。 Fin. Merry Christmas☆ この後、野性の勘と恋するオトコノコの執念で驚異的なスピードでコンプリートしたバンちゃん。ボスとの甘い一夜を…過ごせなかっただろうな、スワンさんのさりげない妨害で(笑) ※クリスマスフリーSSです。よろしければお持ち帰りください。お持ち帰りの際はBBSかメールにてお知らせくださると幸いです。 2004.12.18 朝比奈朋絵
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