グッド・モーニング・コール


スズメの囀りが白々と明ける空に響く頃、この地球署の長たるドギー・クルーガーはゆっくりと意識を浮上させる。
ぼんやりと映るいつもの天井。
再び目を閉じ3つ数えて体を起こし、シャワーを浴びるべくバスルームに向かう。
そしていつもの朝が始まった。


「ウメコ。時間だ」
今日は全員通常業務。
3度の飯よりお風呂がスキvなウメコにとって朝のバスタイムは欠かせない。
そして最近合流したテツに一番風呂を取られないようにウメコはドギーに頼んだ。
「ボス、あと10分早く起こしてv」と。

「うぅ…ん、もぉ3ぷ…ん」
まどろむウメコはもぞもぞと寝返りをうち、心地よい眠りに意識を溶かす。
ため息を隠すことなく吐き出し、根気よく声をかけた。そうしないと後で怖いのだ。
「テツに取られても知らないぞ。ウメコ、ウメコ!」
「…テ…ツ? あ、あーっ!ボス!まだテツ起こしてない?」
「まだだ」
「ありがと、ボスーっ!」
…まだ起こしてはいないが勝手に起きてるかもしれないぞ、という言葉は飲み込んで。そこまで感知はしない。
ちなみにテツは赴任初日に「何時に起こせばいい?」と尋ねたところ(起こして当然だと思っているらしい)「人に起こされるなんてナンセンス!」と跳ね除けられた。
ちょっぴり寂しかったドギーはピンと立った耳を微かに後ろへそよがせた、なんてことは今のところスワンしか知らない。

とりあえず一人目終了、とチェックシートにレ点と時間を書き込むと次にとりかかる。
マイクに向かう前に「ンンッ!」と喉の調子を整え「あー、あー」と最終確認。そして。
「…ジャスミン。起きなさい」
低く、深いささやき。鼓膜を振るわせる声音にジャスミンの顔が綻ぶ。
「おはようございます」
うっすら目を開けて寝転んだままご挨拶。少し舌足らずな口調なのは寝ぼけているからだろう。
ジャスミンにとってドギーはお父さんのような存在で、絶対の信頼を寄せている。と同時に時折甘えも見せるのだが、この「モーニングコールは低めでお願いします」もその表れらしい。
「そろそろ自分で起きれるだろう」
「なんのことざんしょ?」
本当は自力で起きられるジャスミン。この小さな幸せを逃すものかとのらりくらりとかわしては至福の時を味わっていた。

「毎朝大変ね、ドゥギー?」
コーヒー片手にスワンが近寄ってくる。大変だと思うなら代わってくれ、と今更言う気もないので適当に流し一口コーヒーを含んだ。
「そういえばホージーならもう出かけたわよ。ロードワークしてくるってセンちゃん連れて」
「よっぽどこの前のが効いたらしいな」
イリーガルマッチでジーバにボロボロにされたのがよほど悔しかったと見える。
クールを装いつつ、意外と熱い魂の持ち主であるホージーは黙々とトレーニングに励んでいる。宣言どおり次は負けないだろう。
ホージーとセンのところに○を書き込んで、もう一口コーヒーを飲む。
「ところでドゥギー。ひとつ聞いていい?」
「なんだ?」
「どうやってコーヒー飲んでるの?その口で」
「…………放っておけ」

スワンにじろじろ眺められながらコーヒーを飲み干したところで最後の部屋に向かう。
この部屋だけは自ら足を運び、目を覚ますまで付き合ってやるのだ。そしてこの部屋の主がいる限り、この役目を誰かに譲るつもりもない。
トントン、と控え目にノックを2回。返事がないのを確認してマスターキーを使ってドアを開けた。
後ろでに鍵を閉めると静かにベッドに歩み寄る。
「起きないか、バン」
微かに効いた空調が寒いのか、もこもこと掛け布団にもぐりこみ幸せそうな寝顔をさらしているのは、この地球署のスペシャルポリスでトラブルメーカー、赤座伴番その人。
普通に声を掛けても起きないのはいつものこと。
ニヤリと口元を歪め、ぎしっとスプリングを軋ませてベッドに腰掛けるとそっと身を寄せ羽毛布団に埋もれた髪をかきわけて耳元に囁いた。
「…バン」
甘く掠れた声は超エロエロボイス。
ここからがドギーの本領発揮。
圧し掛かったまま枕もとの空調の調整パネルを操り温度を下げる。
それを察知したバンの体は身近にある暖かな毛皮を手繰り寄せて、ふんわりの毛並みを堪能。
くふ、と満足げな笑みを浮かべた彼はもっと、と力を込めて抱き寄せる。
「くっくっくっ…積極的だな」
見た目以上に細い腰を抱き寄せ、朝特有の現象で元気になっているボウヤを己の腰に擦りつけた。
「…ん、ふ、ぅん…」
緩やかな刺激に覚醒の兆しを感じたバンは、目を開くよりも先に鼻先をくすぐるちょっと硬めだが心地よい毛と下半身の疼きを感受する。
「…ボ…ス?」
鼓膜を揺する甘い声音と熱い吐息、そして慣れた重みに相手が誰かを察した。
呟き薄く開いた唇に舌を絡めるとようやく事態を飲み込んだのか、組み敷いた体が抵抗を始める。
「起きたか?」
「ぅあ…ん、ぼ、ボス! か、勝手に入ってこな、ひぁんッ!」
完全に勃ちあがったソレを握って軽くこすると、ビクンッと跳ねてドギーを喜ばせた。
寝起きの降りた髪も、潤んだ瞳も幼さを感じさせて。
でもあがる喘ぎ声はどんどん切なさを滲ませるから堪らない。
「イイコだからヌこうな」
短パンの中に潜り込ませたドギーの掌がやんわりとなで上げる。肉球の独特の感触がバンの性感を高めて湿り気を帯びてきた。
「はぁあん、ゃんッ! ボスぅ…、いつもいつ…、もぉ」
いじめないでください、と懇願するバンの顔はドギーを煽るだけ。
「苛めてなんかいないぞ? 可愛がってるだけだ…」
捲り上げたTシャツの胸元をペロリと舐めて牙を押し当てる。活きのいい魚のようにビクビク跳ねる体が愛しい。時間がないな、とチラリと時計を見やるとバンが不機嫌そうにドギーの顔を挟み自分に向けさせる。他なんか見るな、と言われてるようで顔がにやけるのを止められない。
「イくぞ」



「もー、ボス! 普通に起こしてくださいって言ってるじゃないッスか!」
「だったら自分で起きればいいだろう。ホージーやセンは自分で起きるぞ」
シャワーブースの中から文句を垂れるバンにベッドメイキングをしながらボスはしゃあしゃあと嘯く。
「明日は自分で起きます!」
ざっと汗を流したバンはトレードマークの赤いトランクスとSPDのTシャツ姿で頭を拭きながら出てくると、イーだッ!と舌を出してさっさ着替えると部屋を出て行ってしまった。
「明日寝坊したら覚えておけよ」
最後に枕を整えてドギーも後を追うようにバンの部屋から司令室へと向かう。

そして案の定翌日のミーティングにバンの姿はなく、ドギー直々のモーニングコールは続くのだった。

Fin.





今年の戦隊には手を出さない、と決めていたのに負けました。犬赤です。
需要は恐ろしく少ないように思われるこのCP…。同士の方、いらっしゃったらこっそり耳打ちしてください。←どこで?
「ボスってみんなのパパみたいだよねー。朝もみんなを起こして回るんだよ」ってM瀬さんと寝ぼけた爛れた頭で喋っていたのがこの話のきっかけでした。
私は…ジャスミンのポジションがいいなぁ。適度に甘えられるし。


2004.11.03 朝比奈朋絵 




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