ビーフ・バトル


テツが過去のしがらみを断ち切り、無事一件落着のお祝いで焼肉を食べに行くことになったSPDの面々。
誰もが浮かれているその理由は…
「本当にボスが奢ってくれるの〜?」
「あぁ。今日は特別だ」
「太っ腹よね、ドゥギー」
他人の金で食べるご飯は美味い。ましてや地球署最高指揮官の奢りならば尚更だ。


そんな賑やかな一行が訪れたのはSPD御用達牛■。
「いらっしゃいませー!あ、バンバンさんだv」
「また来たよー♪」
人懐っこいバンは3回目だというのにすっかり店員とも顔なじみ。しかも…
「店長ぉ、バンバンさんご来店でーす」
「おーぅ、よく来たな」
ハグ付きの熱烈歓迎ぶり。
一瞬ドギーの耳がぴくり、と震えたがバンが気付くわけもない。
「今日はみんなで来たんだぜ★」
「ありがとよ!じゃみなさんこちらへどぉぞー!」


ドリンクを頼み(一応みんなソフトドリンク)次々に注文を繰り返す。しかも容赦なく。
少し落ち着いたところでふとドギーが口を開いた。
「お前たちはよく来るのか?」
匂いがつくからといつものコートを脱ぎ、跳ね返り防止の焼肉屋特有の紙エプロンを身につけた姿がマヌケだと写真を撮りまくっていたウメコが首を振る。
「あたし達はあんまり来ないよね。ね、ジャスミン」
うん、と頷くジャスミンの隣でテツも目当ての肉を選定しながら口を挟む。
「俺は初めてきました。ていうか焼肉自体初めてです」
「じゃ初焼肉がボスの奢りってこと?ツイてんな、後輩!」
バシンッ!と背中を叩くバンの顔がほんの僅かに引き攣っていたことに気がつかなかった。二人を除いて。
「俺は時々来ますよ、バンと。な、バン」
バンの隣に座っていたセンがグイッと肩を抱き寄せ朗らかに笑う。急に引き寄せられたバンは危うくカルビを落としそうになり慌てて口に放り込んだ。
「もぐもぐ…っ、うん。センちゃんしか一緒に行ってくれねぇもん。相棒誘っても断られるし。な、相棒」
「当たり前だ。そういつも肉ばっか食っていられるか、ガキじゃあるまいし」
なんだとー!と子供のケンカさながらの騒ぎにボスも頭を抱えてグルルル唸る。
「もーアンタ達仲良く食べなさーい!」
スワンのカミナリにシュンとするSPDボーイズ。その向かいではジャスミンが拍手を送っていた。


たらふく肉を食べ、店長にシャーベットやらデザートをサービスしてもらいご機嫌で店を出る。
「ごちそうさまでした、ボス」
「また連れてってくださいね」
口々にお礼(またはおねだり)を告げて各々自室へ戻っていった。


ドギーがシャワーを浴びミネラルウォーターを飲んでいると来訪を告げるチャイムが静かに響く。時計を確認すると日付も変わろうかという頃。こんな時間に事前に通信もなく訪ねてくる人間は限られていた。
カチリ、硬い音の後入ってきたのは予想通りの人物。
「どうした、バン」
「ずるいッス」
「へ?」
挨拶も前触れもなく呟かれた言葉にマヌケな声を漏らすがバンは気にしたふうもなく続ける。
「オレよりテツのがいいんスね。テツは特キョウだから…」
「ちょ、ちょっと待てバン!何の話だ?」
「オレより後に来たのに」
「バン!」
口をへの字に歪め見上げる顔は…明らかに拗ねた表情で。ただ酒の匂いがするということは…どうやら少々酔っ払っているらしい。
「…わかるように言ってくれないか?」
「オレが何回言っても焼肉連れてってくれなかったくせに、テツだと奢ってくれるんですね」
「バン…」
「も、いいです。失礼しました」
「待て、話は終わってない。…お前こそセンとよく出かけるのか?」
焼肉屋でのことが引っかかっている。何度も一緒に訪れているような口ぶり。馴れ馴れしく肩に回された手。どれもドギーの心中をざわめかせた。
「さっきも言いましたけど? センちゃんしか行ってくれないんです」
どっかの誰かさんはいつも断るし。
もごもごと不明瞭な言葉を呟き、ぷいっとそっぽを向いて唇を尖らせているバンは、ゆらり伸ばされた手になかなか気づかない。

「ぇ?」

手首を掴まれたと思った瞬間にはすでにドギーの腕の中にいた。しっとりと湿った毛がバンを落ち着かなくさせる。
「ボ…ぅッ、ンんっ、」
唇をこじ開ける濡れた舌は多少の抵抗に遭いはしたが呆気なく侵入を果たしわがもの顔で這い回った。
微かに残る焼肉の匂いが生々しくてバンはくらりと酩酊する。
「んぅ、…んん〜ッ、は…ぁン」
弱々しく応え始めたバンの腰を強く抱き寄せベッドへと一歩ずつ歩みを進めた。


とさっ

「焼肉を食う仲というのは…深い仲だと聞いたことがあるが…」
ベッドに押さえつけられながら囁かれるイジワルな言葉にバンが猛然と暴れ始めた。
「…お前は本当に鈍い…」
「なんスか、そ…ぅわッ!ちょっ、ァッ!」
ビリッ、
鋭い歯にパジャマ代わりのTシャツを破られ、いきなり胸の突起を舐められる。その荒々しい行動に驚きつつも抵抗できない。
「ついでに…無防備すぎだ」
誰にでも懐き、素直に甘えるバンに気が気じゃなくて実はいつもハラハラしているドギー。立場上鷹揚に構えているが、センやホージーとじゃれているのを見て頭に血が上ることもしばしば。犠牲になったマグカップの数は…いくつになっただろう。
「わけ…わかん…ッス、バカぁ…ッ!」





ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ

軽やかな電子音。瞼が重くて開けられない。
ふと傍らにぬくもりを感じてモソモソ潜り込むとベロリと首筋を舐められて飛び起きた。
「なっ、えっ、こっ、ボ、ボスゥ?!」
「…おはよう。覚えてないのか?」
冷静になってきた頭は…覚えてる。身体がイヤってほど覚えてる。バックのオンパレードだった夕べの情交。
「…ボス、勝手に勘違いして怒ってたっしょ。機嫌悪いといっつも後ろからだもん」
「…すまん」
それなりに自覚あるらしく、案外あっさりと頭を下げた。
「ま、オレも悪いから許してあげますけど。思ってることは言葉にしないと伝わんないッスよ。オレ、ジャスミンじゃないから」
軋む身体を起こすとどろりと奥から流れ出してくる感触。
再びベッドに逆戻りのバンはギッとドギーを睨み付けた。
「中出しすんなーっ!」
「つい、な」
肩で笑うと怒るバンを軽々抱き上げてバスルームに放り投げ、自分もさっさとシャワーを浴び始める。


そんな朝帰りのバンをこっそりチェックしていたとかいないとか。
ただ意味ありげに
「あれ?新しいTシャツ支給してもらったんだ」
笑顔でバンに声を掛けるセンを目撃した最高司令官が、なんともいえない情けない顔でうなっているだけだった。

Fin.





勢いづいて第2弾。そしてたぶんこれで…しばらくおやすみ(笑)
いいスポンサーついたな、というかネタをありがとう、テツ。
ここでは…犬赤←緑 て感じですかね。
調子こいてバンちゃんのTシャツを破ったのはいいけど、支給品だからなぁ。こっそりボスが新しいのをくれたんでしょうね。ご機嫌取りのひとつとして。


2004.11.03 朝比奈朋絵 




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