7ガツ7カ、ハレ。


うだるような暑さに辟易しながら仕事を終えたら。
まっすぐうちに帰ろう。

「今年は晴れるって」
そう言って嬉しそうに微笑んだ鷹介が待っているから。


「ただいま」
「おかえりー。なぁ見て見て」
帰った早々、腕を引っ張られ連れて行かれたのは小さなベランダ。 そこにあったのは、どこから仕入れたのか飾り付けられた小さな笹と短冊3枚。
もしかしたら、とは思ったが本当に手に入れてくるとは。相変わらずその行動力に感心せざるを得ない。
「飯食ったら短冊書こうな」
♪笹の葉さ〜らさら〜♪ 多少調子っぱずれた歌を口ずさむ鷹介と一緒に夕食の準備を整えた。

「短冊、何書いた?」
「まだだ。お前は何を書いたんだ?」
「なかなか決まんなくてさ〜。給料が上がりますように、とか美味しいモノ食べたい、とか」
「……………」
「あ、呆れんなよ! いいじゃん、願い事には変わりないんだし」
「じゃ俺は定職に就けますように、か?」
「うっわー、現実的すぎてヤダ。っつかお前そんなこと思ってもないくせに」
「冗談だ。…結構難しいものだな」
「……ずっと一緒にいられますように?」
「それは天に願うものではない。俺達がそうあれるよう努力し、心に留めて置けばいいものだ」
「うがーッ!! 恥ずかしくねぇ?!」
「別に。本心だからな」
「…ますます書けねぇよ、短冊…」


結局。何も書かないまま再び吊るされた短冊。1枚だけはクセのある文字で『宇宙平和』と書かれたが。
二人並んでベランダの柵にもたれ星空を見上げる。
「年に1回だけだもん、逢わせてやりたいよな」
たとえ地上で雨が降ろうとも雲の上はいつだって晴れている。我々に知られないよう、こっそり逢瀬を楽しんでいるぞ。
きっと2人にとっては曇りや雨のほうが都合がいいのかもしれない。余計な輩に覗かれずにすむからな。
そんなことを言えばきっと「ロマンのねぇヤツ」とむくれるだろう。
だから合わせるのだ。「晴れてよかったな」と。
「でもオレだったら言いつけなんか守んなくて、逢いたい時にいくぜ?」

悪戯っ子のような、しかし強さを秘めた瞳を煌かせて紡ぐ言葉を唇で吸い取り、天上の逢瀬に負けないくらいの熱いひと時をすごす。

「いっこぉ…名前、たくさん呼んでくれよ…」
乱れた吐息の合間の願い。
「鷹介、…鷹介、ようすけ……」
低く、甘く、掠れ気味に。
耳元で、胸元で、唇が触れ合ったまま。
何度も何度も囁くと、うっとりと目を閉じた。


「7月7日はオレにとっても記念日だから」

曰く俺が初めて『鷹介』を『鷹介』と認めた日。

最初の一歩の記念日だから、と。

「そんな可愛いことを言われたら、歯止めが効かないだろう?」
「望むところだぜ」

勝気な瞳が快楽に潤むまで、さして時間はかからなかった。


 終 





甘い…。一甲がでろんでろんに甘い…。


2004.07.07  朝比奈朋絵 



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