キャラメル・キス ツツー…と首筋を流れる汗、ジリジリ照り付ける陽射しに顔を顰めながら研究所に辿り着く。 この中は冷暖房完備の極楽。 …のはずだったのに。はずだったのにぃ〜〜〜っ! 「怒ると余計暑くなるわよ」 「扇風機でガマンしろよ、な鷹介」 吼太に言われるまでもなく、壊れてしまったクーラーに一睨みして扇風機を独り占めする。 ピリピリするおぼろさんのカミナリが落ちないように大人しくするけど、暑いものは暑い!だいたいまだ5月なのになんでこんなに暑いんだよ! イルカのぬいぐるみを抱きしめ目を閉じた。眠ってしまえば少しは気が紛れるかもしれない、と思ったから。 ………。 「ひゃっ!」 「起きたか」 いつの間にかホントに眠ってらしい。急に感じた冷たい感覚に目が醒めた。 開けた視界にはアイスのカップを持った… 「いっこぉ?」 呆れ顔の彼が見下ろしていて。でもオレはその手にあるアイスの方が気になる。 「わっ、どしたんだよソレ!くれんの?」 一甲の手からカップを奪って答えを待たずに開けた。 あ、スプーンないや。 「ほら」 隣に腰を降ろした一甲がプラスチックのスプーンを差し出す。気ぃ利くじゃん。ニコニコとアイスを掬って口に放りこむと、心地よい甘味と冷たさが広がった。 「ホント美味しそうに食べるよな」 「一甲の気持ちがわかるわよねー」 「…餌付け、か」 外野が何か言ってるけど気にしない。だって今すっげシアワセだもん。ほてった身体にアイスが染み渡るカンジ。 「そういえば珍しいよな、二人が甘いもの持ってくるなんて」 「今日はアイスの日だからと現場先の奥さんがくれたんだ」 一鍬が嬉しそうに言う。キャラに似合わず甘いもの好きなんだよな、こいつ。 それにしてもアイスの日なんてあるんだ。オレや七海や一鍬は喜びそうだけど、一甲には無関係っぽい。さっきだって一人お茶(しかも熱いの。暑苦しいヤツめ)飲んでたし。 二つ目のカップを開けていると、腹壊すぞ、なんて小言言いやがって。 なんか悔しくなったオレはアイスを一掬いして無理やり一甲の咥内へ押し込んだ。 「美味いだろ?」 わざとキャラメルプディングの、かーなーりカラメルの多い部分を選んでやる。 オレとしては目を白黒させて噎せる一甲を期待したのだが…。 「おすそ分けだ」 不明瞭に呟いた瞬間、素早くカップを奪いテーブルに置き、オレの腰を引き寄せ唇を塞ぐ。抗議しようと開いたすき間から忍び込んだ舌に絡め取られ、ダイレクトに甘さを伝えてきた。 散々蹂躙されて、解放された頃にはぐったり一甲に寄り掛かる状態。 「どうした?溶けるぞ」 視線だけ上げると勝ち誇った笑みを浮かべていて。 ちくしょー、ちくしょー、ちくしょー! 肩にゴツゴツと頭突きをかましながら唸ってしまう。 「やめろ、痛い」 全然痛くなさそうな声が降ってきて、再び顎を捕えられた。 いつの間に含んだのか、また甘い液体が流し込まれるのを大人しく受け止める。 しばし蕩けそうな甘さを味わっていたのだが。 「あんたら、いい加減にせぇ!!」 カミナリと共に炎天下に追い出されてしまった。 「お前のせいだかんな」 「では涼しいところへ行くか?」 …たしかにクーラーは効いてんだけど、汗だくになるようなことをさせられてしまったのはみんなに内緒、ということで。 終
…って七海たちが気付かないわけないわな(笑) 一日遅れの『アイスの日』ネタでした。 意味ナシ・山ナシ・オチナシ…。 2005.05.09 朝比奈朋絵
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