カラフルマリッジ - グリーンデイズ - アツアツの新婚というのは、他人から見ればうっとおしいことこの上ない。 しかし得てして本人たちは気付かないもの。 そんなバカップル改めラブラブ夫婦がここにもいた。 「今日の帰り、一緒に買い物行こうぜ」 いってらっしゃいのキスを済ませた鷹介が思い出したように言う。聞けば細々とした生活雑貨と食材が足りないとのこと。買える時に買っておいた方がいいし、幸い一甲の仕事も順調に工事日程が進んでいるので遅くならずにすみそうである。 迎えに行く、といってきますのキスを返した一甲に、 「どうせなら待ち合わせしないか?デートみたいでよくね?」 期待に満ちた顔に勝てるわけもなく、今に至る。 約束の時間は18時。思ったより早く待ち合わせ場所に着いた鷹介はそわそわキョロキョロと辺りを見渡した。 「早く来ないかな」 一緒に寝食をともにしているのに、ちょっとした約束が嬉しくて顔が綻ぶ。ジャカンジャとの戦いの頃はデートらしいデートも待ち合わせもしたことない。 「なんか…平和ってカンジだよな」 行き交う人々をゆっくり眺め、そして自分の薬指にはまる銀色の指輪を見遣る。 平和と幸せの象徴かも、とその輪に唇を寄せると。 「俺にはしてくれないのか?」 いつ来たのだろう、一甲が背後に佇みニマニマ笑っていた。 「気配消してくんなよな!」 見られた気恥ずかしさから、思わず蹴りを繰り出すが軽々と避けられてしまい、余計に鷹介はむくれる結果となる。 「別に気配など消してないぞ?」 つまりそれだけ鷹介が指輪に魅入っていたということで。暗にそれを指摘された鷹介は恥ずかしさのあまり踵を返してずんずん歩いていった。 「おい、どこへ行くんだ?」 「知らねぇよ、バーカ!」 耳を真っ赤にして物凄い勢いで歩いていく鷹介が可愛くて、一甲は笑みを零す。言葉にすればまた怒らせてしまうから、こっそりと。 「買い物に行くのではなかったか?」 「もういいよ!」 すっかりヘソを曲げてしまった鷹介に苦笑を浮かべた一甲は大股で近づき、鷹介が何かを言う前に手を繋ぐ。 きゅっと握り込んで。 「行こう」 微笑めば一瞬目を丸くして瞬いて、うん、と零れんばかりの笑顔が返ってきた。 「掃除道具は100均で買うからあとは…なあ、洗剤切れそうだから薬局も行っていい?」 「洗剤ならここにあるだろ」 「こういうのは薬局のが安いし、ポイントも貯めれるじゃん」 カートを押す一甲の前にあるカゴはほんの少しの食材と日用品。意外にも堅実な買い方に一甲は失礼ながら驚いている。 結局、併設されてる100均ショップに立ち寄り、帰る道中の薬局を覗いて。家に着く頃には真っ暗になり虫の声が響いていた。 「飯作るの面倒〜」 ソファに倒れ込む鷹介の目が「ご飯作ってv」と甘えているのに気付き、苦笑しながら寝転ぶ鷹介の唇を存分に貧る。ギシッと微かに軋んだソファと舌が絡まる音が部屋に響いて生々しい。 「これでチャラにしてやる」 「ん…はぁ…っ、お前ちったぁ手加減しろよ…」 くったりソファに沈み恨めしげに一甲を睨んだのだが、快楽に溶けた瞳じゃ迫力ゼロ。そんな目が余計一甲を喜ばせるだけなことにまだ気付かない。 しかしまずは空腹を満たしてから。その後ゆっくりじっくり味わおう、と一甲の中でしっかり今夜のプランが出来上がっていた。 穏やかで遅めの夕飯を食べ、少し狭いキッチンで揃って洗い物。七海が見れば「ウザイ」と一蹴されそうな光景だが、ラブラブな二人にはこんな些細なことも楽しい。 「あ、一甲。さっき買ってきた洗剤!持ってきてくんねぇ?」 スポンジを濡らしてから洗剤がないことに気付いた鷹介はゴミの仕分けをしていた一甲(らしい)に声をかける。 実は赤いエプロン姿をつけた鷹介の後ろ姿にハァハァしていただけの一甲はビクンッと肩を揺らし、表面上はなんとか取り繕ってビニール袋から洗剤を出して渡した。 「なあ、一甲。こういうのになろうな☆」 洗剤を受け取った鷹介がそれを突き付けながらにぱっと笑う。ほんのり頬を染めて。 「は…?洗剤、になるのか?」 「え?!もしかして…知らねぇの?」 「何をだ?」 「…………」 「…………」 「…ホントに知らねぇの?マジかよ!」 うっわ、恥ずかしーッ!と騒ぎまくる鷹介とは反対に一甲はクエスチョンマークを飛ばしたまま。 想像(希望)通りの反応が返ってこなかったのが悔しいのか恥ずかしいのか、件の洗剤で一甲の腹筋をボコボコ殴る鷹介の腕を掴んだ。 「だから何なんだ、それは」 未だ困惑の色を浮かべた一甲に鷹介も大人しくなる。 「…コレのCMが…」 「CM?」 「おじいちゃんとおばあちゃんが仲良く手ぇ繋いでて…それってすげぇ理想で…」 「で?」 「…オレ…たちも…そういう…ふぅになれ…らな…って」 「ん?」 この男の悪いクセ。それは聞こえないフリ。 「ッッ!い…一甲のバーカッ!!」 ボディブロー一発をお見舞いし、スポンジと洗剤を投げ付け寝室に駆け込む鷹介を床に懐いたまま茫然と見送る。 その隣でゴロン、と事の発端となった洗剤(チャ○ミーグリ○ン)が転がった。 「一甲のバカ!」 バフバフと枕にパンチを繰り出し、恥ずかしさを発散させる。 家族、というものに人一倍憧れを抱いていた鷹介にとってチャー○ーグリーンの若夫婦も老夫婦も目標そのもので。いつまでも自然に寄り添い、支え合い、微笑みあっていきたいと思っていた。ママゴトのような新婚生活は長く続かないとわかっていても。 コンコン 「鷹介」 軽いノックの後かけられる控え目な呼び掛け。出会った頃の不遜な態度はどこへやら、今じゃすっかり鷹介のいいように操られている。 「……………なんだよ」 結局ここで返事してしまうから一甲が付け上がるんだ、とわかっていても子どもみたいに拗ねているのは時間が勿体ないから。 キィ、微かに鳴るドアに油を注さなきゃと関係ないことを思う。 わずかに開いたドアの向こう、大きな身体を縮こませた一甲が所在なさげに立っていた。 「……すまん、鷹介」 「…いいって。怒ってねぇよ」 苦笑を浮かべ手招きするとベッドに腰掛ける鷹介に一直線に突進してきた。 いそいそとベッドに上がり鷹介を後ろから抱きしめ髪に鼻先を埋める姿に(可愛いなぁ)なんて思ったり。相当鷹介も腐っている。 「……おじいちゃんになっても、一緒にいられるといいな」 「縁側で囲碁打ちながら茶でも啜るか?」 「えー、もっと元気に過ごそうぜ」 「ではゲートボール」 「うわっ、定番!つか似合わねぇ!」 笑いあってケンカして触れ合って。 そうやって毎日が積み重なっていけばサイコー。 「風呂、一緒に入るか」 差し出された手を取ってきゅっと力を込めて。 「OK!」 反動つけて立ち上がれば勢い一甲の胸の中に飛び込む形になった。 「なぁ、」 上目遣いで小首傾げれば。 「仕方ないな」 苦笑とともに肩と腰に回された腕は、男である鷹介をいとも簡単に抱き上げて。多少乱暴にドアを蹴り開けて浴室へと足を向ける。 「ドア壊すなよ」 「手加減してる」 「オレには手加減しないくせに」 「手抜きできるか。いつでも全力投球だ」 「…ばぁか」 その数日後、鷹介にねだられて手を繋いで散歩する二人の姿を目撃した一鍬が研究室で膝を抱えて泣いていたとかいないとか。 終
うちの鷹介、「ばーか!」が照れたときの口癖らしいです。お子ちゃまですね。 新婚=チャ○ミーグリ○ン。なんてベタベタ; ところで最近このCMってやってます? 2004.11.09 朝比奈朋絵
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