被害者は誰だ 「いーっこぉv」 研究所に飛び込んでくるなり盛大なハートマークを撒き散らす鷹介に仲間たちはうんざりしている。 こんな状態で鷹介は周りに自分たちの関係はバレてないと思ってるからある意味すごい。 「兄者なら格納…」 格納庫にいるぞ。一鍬は最後まで言わせてもらえず、いつものこととわかっていながら額に青筋を立て、それを宥めるのが吼太の役目といつの間にか決まっていた。 「私達に目もくれなかったわね」 イルカのぬいぐるみを抱えてぷぅと頬を膨らませる七海の向かいで、未だ一鍬が 「なぜ兄者がいるとわかったのだ」 とブツブツ文句を垂れている。 「おぼろさん、言いましたか?」 一番可能性の高い人物に伺いを立てれば、キィ、椅子を回転させて振り向いた。 「うんにゃ。…ま、アレやろな」 アレ?と一鍬と吼太が首を傾げ、七海はピンときたのか納得顔で頷いた。 「愛の第六感、てやつね」 「一甲ちゃんの気配だけには敏感なんやろねぇ」 メインルームでそんなことを言われているのも知らず、鷹介はゴウライビートルの調整をする一甲の元へ直行したのだが…なんとなく邪魔しちゃ悪い雰囲気で尻込みしてしまう。 七海あたりに「今更何言ってんのよ」とツッコまれそうだが…。 「いつまでそこにいるつもりだ?」 おそらく鷹介が研究所に近づいてくる時点で一甲は気付いていたのだろう。入口付近でうろうろしている鷹介に苦笑混じりの声をかけた。 驚いた表情を一瞬浮かべたがすぐにえへへ、顔を覗かせ小走りに駆け寄り、屈んでいる一甲の背中に張り付いた。 「来てたんだ」 「あぁ、おぼろ殿に呼ばれてな」 鷹介を背負ったまま作業を続ける姿は恋人というより親子に近いが、一鍬が見たら間違いなく泣き崩れていただろう。 「…すげぇな…全然わかんねぇ」 一甲の手元を眺めていた鷹介は心底感心した声を上げる。褒められるのは嬉しいが、忍びとしては少々問題あるかもしれない。 「お前も出来るようにならなくてはいかんぞ」 「一甲みたいに器用じゃねぇもん」 鷹介の場合、器用以前に集中力に難ありの気がするのだが。 にやりと口元を歪めたことに鷹介は気付かない。 「俺の指はそんなに器用か?」 「え?」 明らかに違う声音にピクンと鷹介の危険レーダーが察知したが、一甲の行動の方が早かった。 首に回る片腕を引っ張り、バランスを崩したところを素早く抱き抱えて組み敷く。 「ちょっ、な、にすんだよ…ッ…」 乱暴な仕種なのに全然痛くなかったのは包み込んだ逞しい腕のおかげ。しかしこんな所でこんな体勢はおかしかろう。 当然のように抗議する鷹介の耳たぶを強く弱く摘んで、耳の後ろ、髪の生え際を擽る。 「自分ではどのくらい器用なのかわからんのでな」 人の悪い笑みを浮かべて耳たぶで遊ぶ指を、鷹介の口内に忍ばせ舌を嬲った。 最近急速に開発されている身体は一甲の体臭と体温に敏感に反応し、徐々に抵抗を緩める。それに気付かない一甲ではない。満足そうに目を細めてもう一方の掌をTシャツの下に差し込み、ゆるぅりゆるぅりと全身に這わせだした。 ぴくっ、ぴくんッ…時折しなやかな筋肉が緊張を伝える。そのたびに唇からは熱を孕んだ吐息が転がり落ちた。 口に含めておいた指を引き抜き、強すぎず弱すぎず、絶妙なタッチで腹部からゆっくり這い上り、微かに立ち上がる胸の華に辿り着く。 次にくるであろう衝撃に耐えるべく、唇を噛み締め目を固く閉じた。しかしいつもと違い、濡れた指で淵をなぞったり軽く引っ掻いた後、掌を小粒に押し当てクルクルと撫で回すだけ。少々困惑の色を浮かべる鷹介の耳元に唇を寄せた。 「立ち上がってきたな…」 ぷくりと膨らみかけた粒が与えられる愛撫によって硬さを増してきて。一甲はその感触を掌でリアルに感じていた。 「バ…ッ、恥ずかし…ぃ、こと…言う、な」 顔を真っ赤にして身体をよじらせるが、その動きは余計に押し付けることになってしまう。 くくく、と低く笑う男を軽く睨みつけ、バカやろ…と小さく呟いた。 薄暗い照明、微かに香るオイルの匂い。身動きするたびに足場がカシャンと鳴る。 Tシャツを胸元までめくり、革パンも膝までしか下げずに及ぶ行為に不快感より興奮が勝っていたことは否めない。 激しさはないが緩慢で濃厚な愛撫が続き、鷹介の中心は触れられていないにも関わらず自己主張をし、湿り気を帯びていた。 「あっ…ふ、んぅ…」 イタズラな指は最近覚えた鷹介のイイトコロを的確に捉らえ、執拗に攻め立てる。その度に上がる甘えるような声に一甲も煽られて、さらに笑みを深めた。 「どうだ、鷹介」 「はぅんッ、はァ…、イ…ィ」 鎖骨から顎下まで尖らせた舌でツツーっと舐め、顎を甘噛みすると軽く頭を押しやられ、頬に手を滑らせ引き寄せられる。ちゅ…とたどたどしいキスを繰り返す鷹介が愛しい。 一度深く唇を結び、瞳を覗き込んで先を促す。 「どうしてほしいか…言えるな」 「や…っ、言わせ…んな…ッ、バカ」 荒い息の合間の生意気な言葉とはうらはらに身体は素直で。ゆらゆらと腰が刺激を欲していた。 しかし微かに残る羞恥が声にすることを躊躇う。ものすごくインランになったみたいで恥ずかしいのだ。 「いっこぉ…」 察してくれ、と上目遣いで名を呼ぶ。その声が隠しきれない情欲に濡れていて、一甲の官能をストレートに直撃した。 「仕方のないヤツだ…」 きっともう止まらない、とくねる色づいた身体を前に一甲はこっそり生唾を飲み込む。 震えるソコに伸ばした手が触れる直前。 「おーい、一甲ちゃん、鷹介ー。ご飯出来たでー。はよ戻ってきぃ」 見計らったようなタイミングで響いたおぼろの声に、目をぱちくりさせた鷹介は「うわァッ!」と叫んでのしかかる一甲を突き飛ばし、わたわたと立ち上がるとトイレへと消えた。 後に残された一甲はがりがりと後頭部を掻きむしり、憮然とした表情のままメインルームへと足をむける。 「邪魔やったか?」 戻る途中の通路で壁に凭れてニヤニヤ笑うおぼろがいた。 「悪趣味だな」 紅い稲妻を背負って威嚇したところで彼女には一切効かないらしい。飄々とした顔で「んならアンタは悪代官やろ」と笑う。 「聞かれてるの知っとったんとちゃうん?」 「こちらからの通信は切ってあったはずだが?」 実は己のチェンジャーと鷹介のジャイロの通信を、鷹介に気付かれないようにオフにしていたのだ。 「あそこ(格納庫)はあたしの庭やで?」 「……参考になった」 やはり彼女の方が上手のようだ、と一甲は僅かだが眉間にシワを寄せた。 「あんま鷹介をいじめんといてな。ウチの可愛い弟やから」 鷹介がその後しばらく警戒しまくり、一甲に近寄らなかったとか。 それに伴い一甲の不機嫌度数が上昇し、一鍬が日に日に窶れていくのに皆同情を禁じ得なかった。 終
携帯をいじってたら半年前の日付で書きかけの作品が出てきました。捨てようとしたら怒られたのでとりあえず終わりまで書いてみましたが…当時の私はどう終わらせるつもりだったんでしょう。 つかおぼろさん…いい性格してます。 2004.12.14 朝比奈朋絵
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