チラリズム


新年。
おぼろ研究所にはいつもの顔ぶれに加え、御前様とシュリケンジャーの二人が揃い賑やかな年明けとなった。
七海の御節は一人で作ったとは思えないほどの出来栄えで、一鍬はすでに結婚後のことを考えているのかデレデレである。

イライライライラ…

なんでお前までニヤついてんだよ。

先ほどから一甲の向かいで時折不機嫌そうに睨み付けているのは鷹介。
今朝方の仕打ち(自分も楽しんだけど)に怒っているのかと思えば、七海の手料理を褒めていることに腹を立てている様子である。
「オレが作っても褒めてくれないくせに…」
「ん?鷹介、何か言ったか?」
黒豆をつまんだままブツブツ独り言を言っている鷹介を吼太が訝しげに眺めるが、あまり首を突っ込まないほうが得策と踏んでそれ以上は放っておくことにした。
ポイッと黒豆を口に投げこみもぐもぐと咀嚼しながらエビに手を伸ばす。が
「まだまだだな」
ひょい、と先にエビを掻っ攫っていったのは…
「一甲っ!!」
ギャンギャン騒ぎ立てる鷹介を軽くあしらう一甲。いつもどおりの光景を打ち破ったのは…
「ジャカンジャが出現しておるぞ」
御前様の静かな声。
「正月くらい静かにしててくれよー」
みんなの気持ちを代弁して鷹介が嘆く。
しかし出てしまったものは仕方ない。
「よーし、いくぜぇっ!!」

着物姿のまま飛び出したハリケンジャー&ゴウライジャーの目の前に立つのは巨大化した…
「メガタガメ…だよな、あれ」
「でもシナ作ってないか?」
「どうせウェンディーヌでしょ!」
「…とにかく行くぞ」
「緊張感に欠けるが…」
「「「忍風!!」」」
「「迅雷!!」」
「「「「「シノビチェンジッ!」」」」」













数日後。
鷹介と一甲がおぼろ研究所に顔を出すと、コンピュータの前でおぼろ・七海・吼太・一鍬が何かを見ていた。
「なんか面白いモンでもあるのか?」
好奇心のかたまり、鷹介が駆け寄り覗き込むとガサガサと慌てて何かを隠すそぶりをする。
「よ、鷹介! な、なんや、来とったんか」
鷹介の後ろにいる人物に目をとめて、張り付いたような笑顔を浮かべるおぼろ。
明らかに不審である。
「何隠したんっすか、おぼろさん! オレにも見せてくださいよ!」
「別になんでもないって、鷹介」
後ろ手で書類の間に隠したものを手中に収め、どうにかコトをやり過ごそうとする吼太のフォローも十分怪しく、よけい鷹介の好奇心を煽る羽目となった。
「なんでもないのなら別にいいだろう」
鷹介にとことん甘い一甲はもちろん鷹介の味方である。
音もなく吼太に歩み寄り、奪い取ったモノに視線を走らせると一甲の動きがフリーズした。
吼太と一鍬とおぼろは「あちゃ〜」と呟き、七海はどこかしら楽しそうに一甲を眺めている。
「? どうしたんだよ一甲」
とことこと隣に移動して覗き込むと「あ、この前の写真じゃん」と頬を綻ばせた。
この前の写真。
それは5人が着物姿でシノビチェンジしている瞬間が切り取られていた。
「ん? でもこれって誰が撮ったんだ?」
「ウェンディーヌが送ってきたのよ〜」
ほら、と写真が入っていたと思われる封筒と手紙が差し出される。
独特のジャカンジャ文字でしっかりとウェンディーヌのサインがあり、同封されている手紙には『シャッターチャンスは逃さないわよ、ハリケンレッドv』と記されてあった。
「シャッターチャンス??」
なんのことだかわからない鷹介は小首を傾げて一甲を見上げる。
「一甲?」
写真を持つ手が小刻みに震えているのに気づき、訝しげに呼ぶが一甲の目は写真に注がれたまま。
わかっていない鷹介は写真を見ながら「やっぱ一甲って着物似合うよな〜」とニコニコしている。
一鍬と吼太とおぼろはすでにメインルームから避難済み。館長もコタツに頭を突っ込んで見ザル聞かザル言わザル状態。七海だけがソファにどっかり座って2人のことを見守っていた。
「鷹介…」
「ん?」
「二度と着物なんぞ着るな!!」
今まで表情硬く押し黙っていた一甲がいきなりブチ切れて怒鳴る。一方怒鳴られた鷹介もその理不尽な物言いにカチンときたらしくケンカごしである。
「なんだよ、いきなり!! 似合ってないなら似合ってないって言えばいいだろ!!」
「鷹介〜、誰もそんなこと言ってないわよ〜」
「七海は黙ってろ」
楽しんでいる外野に一喝して退場させると、一甲は写真を鷹介に突きつける。
「これだ!」
そう言って一甲が指差したのは鷹介の足元。いつものくせで大股開きで変身している鷹介の裾はぱっくり開いていて、白い脚が丸見えなのだ。
「あ〜、モロ見えじゃん、オレ」
ちなみに隣に立つ吼太も裾がはだけているのだが、誰もそれに対して突っ込んでいない。
鷹介が写真を片手にカッコわりぃ〜と笑っていたが、一甲の機嫌はますます悪くなっていることに気づかない。
「…お前は自覚が足らないようだな…」
ゆらり立ち上る不穏な気配に、今更ながらに鷹介は身の危険を感じて蒼褪める。一甲の独占欲の強さを忘れていた。
「い、一甲…?」
「嫌ってほど叩き込んでやる」
ニヤリ、と歪んだ笑みを浮かべた一甲の背後で紅い稲妻が光っている。
ヤバイ、ヤバイ…と追い詰められたウサギのように震える鷹介の運命はいかに。
部屋には鷹介の「助けて〜」という声だけが虚しく響いていた。



それ以降、鷹介が着物を着る機会はなくなった、と仲間は証言している。
しかし彼らは知らない。二人きりのときだけは着ていることを。




 終 





うぎゃ〜〜〜っ!!! アップし忘れてました凹 えっと…本当は『ゆく年くる年』の直後にアップする予定だったんですが…もう2月ですね〜(遠い目)
チラリズムっていうよりバッチリ見えてるんですけどね、脚。いや〜、本当に白いな、と感心しました。
お互い嫉妬深いようです、うちの甲鷹。ただ今回は一甲のほうが先に我慢ならなくなったようで。 嫉妬もラブラブ生活のスパイスなんですよ、きっと。


2004.02.12  朝比奈朋絵 
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