How do you relax? 「一甲」 古い文献に目を通す俺の背中にもたれて、前を向いたまま呼ぶ。そして背中のぬくもりと重みが薄らぎ再び少し甘えた声で、いっこう、と呼ばれた。 かけていたメガネを外し振り向くと、掠めるように触れる彼の唇。 ほわん、と笑み傍らに置いてあったマグカップを手に取る。もうさきほどのキスのことなど忘れたように。 鷹介は想像以上にスキンシップが好きだ。 「だって、人の体温って気持ちいいじゃん?」 その言葉に過去彼に触れただろう人物に軽い嫉妬を覚えた。…さすがに七海や吼太にまでは大人げないので考えない振りをしたが。顔に出たのか「何考えてんだよ」と追究され素直に自白すると、鷹介はほんのり頬を染めて消え入るような声で「…ばか」と呟いた。そして「こんなに触ったり触らせてるのはお前だけだ」と。 また、キス。 軽く触れ合わせて、ついばんで。舌先で下唇を舐めやるとピクンと瞼が震えた。 この先まで進むのかはこの後の鷹介の出方次第なのだが…潤んだ瞳のままニッコリ笑い抱きついてくる。…とりあえずここまでらしい。 「なぁ一甲、お腹すいた」 色気より食い気。大部分お子様、ときどき(本当に稀に)ドキッとさせる大人な彼のいつもの調子に思わず苦笑が漏れる。 「今日、チャーハンと餃子が食べたい」 こいつと暮らすようになってから覚えさせられたレパートリー。餃子は2人で具を包む作業が楽しい、ともっぱら現在のお気に入りメニューである。 「皮、ないぞ」 「んじゃ買いに行こう」 頷き立ち上がると、足元でまだ鷹介が座っている。見上げて手を伸ばしているのは「起こして」の合図なのだろう。これが他の輩ならば「自分で立て」と一蹴するのだが。「鷹介にはデレデレに甘いのよね」と言った七海の顔を思い出しながら両手を掴み、引っ張ってやる。と戯れるように腕の中に身体を預けてきた。 「これじゃ出掛けられんだろう」 「ん? 行ってきますのキスしてくれたら」 「一緒に出るのにか?」 「いいじゃん、な?」 心持ち顎をあげて、キス待ち顔。 頬へひとつ、額にひとつ、チョンと唇を落とすと少し不満げな顔で睨みつけてくるが、手を繋ぐとはにかんだ表情を浮かべた。 いってきます、おかえり、おはよう、おやすみ。 それ以外でも何度も唇を触れ合わせる。 「大好きだーっ!って思うと、したくなるんだもん」 よくそう言って笑っている。 「知ってるか? キスって長生きの秘訣なんだぜ? とくに大好きな人とのキスはな」 だから、とまた一つ、キスをする。 「ずーっと、一緒にいようぜ」 そんな囁きとともに触れ合わせた唇がどんどん深いキスへと変わっていくのに時間はかからなかった。 終
ぎゃーっ!! なんだこの砂吐きそうなほど甘ったるいSSは!とお思いの方もたくさんいらっしゃるでしょうね…。私も思います。 テレビで「いってらっしゃいのキスで(平均)5年長く生きられる」といっていたのでそこからネタ拝借。キスだらけのSSが出来上がりました。 鷹介も一甲も特殊な職種(笑)なので少しでも日常生活ではリラックスできるように、と。 で鷹介の場合は好きな人に触れているのが一番のリラックス。 2003.10.31 朝比奈朋絵
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