LOVE LOVE LOVE


オレの好きなもの?
青い空と。
ラーメンと。
七海、吼太、館長、おぼろさん、…一鍬?
……。


「なんでそこで一甲が出てこないの?」
きょとん、って顔で七海と吼太がオレを見る。
「だって、あいつすぐにオレのこと『未熟者』って言うんだぜ?愛想悪いしさ」
「一鍬だって同じじゃないのか?」
一鍬は死闘の島でなんとなく性格わかった気がするだろ? でも一甲は…。
「たしかにねぇ。何考えてるかよくわかんないし」
「あいつだけまだ未だに『ハリケンレッド』って言うんだぜ? それってなんか悔しい」
「強いし」
「大人だしぃ」
「「鷹介とは大違いだから」」
…そこで口揃えて言わなくてもいいだろ。ちゃんとわかってるよ、そんくらい。



ちぇっ、と唇を尖らせていたあの日からまだ数ヶ月。
一甲がちゃんと名前を呼んでくれたり「仲間」と認めてくれたり。いろいろあったんだ。
オレもいろいろあって。
あいつがときどき見せる柔らかい表情にドキドキするのはどうしてか。
子ども扱いされるのはイヤなのに、一甲に頭をポンポンと撫でられるのはキライじゃない。
あいつの前にいると、自分が自分じゃなくなるようで怖い。でも一緒にいたいと思う。
「好きなんでしょ?」
と意外にも真剣な顔で七海が問い詰めてきた。
そりゃ好きだよ、仲間だもん。
「ホントに仲間としてだけ? じゃ、一鍬にドキドキする?」
これまた真剣な顔して聞いてくる。一鍬には…別に?
「私はドキドキするよ…一鍬に」
チューピッド以来、確かにこの2人はお互いを意識するようになっていた。傍から見ていても温かい気持ちになる。
「ねぇ鷹介」
ちょっと頬を赤くした七海が改まって俺を呼んだ。…うん、言いたいことわかった。
「…まだはっきりわかんねぇけど。そう、なんだと思う、きっと」
逃げるのは自分の信条じゃない。わからないものをそのままにしておくのは気持ち悪いし。
「サンキュ、七海」
「今度ケーキおごってね」
オイシイお店みつけたんだ、って笑う七海に「一鍬と行けよ」と返しオレは研究所から飛び出していく。


勢いで飛び出したのはいいけど一甲がどこにいるかなんて見当つかない。
後先考えないのは鷹介の悪い癖だぞ、って吼太の声が聞こえた気がする。でも身体が勝手に動いたんだから仕方ないだろ。
公園の芝生の上でコロンと転がって、吼太へ口を尖らせて文句を言う。
全身から汗が流れてる。ジャケットはとっくに脱いで腰に巻きつけてるけど、それも熱が篭って暑いから取ってしまった。
夕方の少しだけ冷たくなった風が気持ちよくて、しばらく目を閉じる。

本当に一甲のことが好きなのか。
仲間ではなく、特別な想いなのか。

答えはイエスだ。
でなければあいつの一言にあんなに一喜一憂しないだろ。名前を呼んでもらえてあんなに嬉しかったのも、突き放した物言いをされると悔しさと同時に悲しさを感じるのも。
たとえばこれが一鍬や吼太が相手でもこんなに心が乱れることはない。
いつから特別になったんだろう。

内に意識が向いていた。ふと気づくと顔の辺りが陰っていてよく知った気配が隣にあった。
静かに目を開けて見上げると一甲がじっと前を見つめている。
こっちを見てほしくて「いっこぉ…」と呼んだけど、思いの外子どもっぽい声音に自分で驚いた。なんか甘えてるみたいじゃんか…。
静かにこちらに視線を向ける一甲はちょっと呆れた顔をしている。
「お前は本当に忍びなのか?」
無防備に寝てる・近づいても気づかない。もし俺がジャカンジャだったどうするつもりだ、と。
「そ、それよりなんでここにいるんだよ、一甲」
寝転がったまま続きそうになる説教を遮って尋ねると、また視線を前へ向けた。
「別に」
「…もしかして日よけになってくれてたとか?」
「バッ、…いや、そういうわけではない」
珍しく歯切れの悪い一甲の頬が赤く見えるのは夕焼けのせい?
ぷくく、素直じゃねぇな。結構カワイイとこあるじゃん。
「な、ラーメン食いにいかねぇ?」
「構わんがもちろんオゴリだろうな」
よっ、と飛び起き振り返るといつもの腕を組んだ少し横柄な態度の一甲に戻っていた。
でもそれが照れ隠しだって気づいたから怖くない。

新しい一面を見るたびに嬉しくなる。
夕焼けがキレイな夏の終わり。一甲を好きだと自覚した。
帰ったらちゃんと七海に報告しよう。

『オレの好きなものリストに一甲が加わった』ってこと。
しかも一番目だぜ、って。



 終 





甲鷹初SS(このサイト外では書いてるけど)ということで自覚編≠ナす。
残暑厳しいのでまだ夏の話でもOK?1年前のこの時期って甲鷹にとってウハウハな話が多かった…んですよね?
鷹介が乙女街道まっしぐらしそうで、ちょっと不安。

2003.9.16  朝比奈朋絵 





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