君は僕の太陽だ テレビの音を掻き消すほどの雨粒が屋根をたたく。いきなり暗くなったと思ったらあっという間に視界が雨でけぶった。 「あーぁ、やっぱ降ってきたか」 ガラス越しに空を眺めて鷹介がため息をつく。下手な気象予報士より空を読む力は長けている彼だから、雨が降ることは数刻前からわかっていたのだが。 それでもやっぱり今日は晴れていてほしかった。 「梅雨だから仕方ないだろう」 そうめんとツユと冷奴をお盆に乗せ一甲がドアを足で開けて入ってきた。 「行儀悪いなぁ」 「そう思うなら手伝え」 「いただきます」 さっさと箸を取りそうめんに手を伸ばす鷹介を呆れたように見遣る。 「でもさ。3年前は晴れてたぜ」 「…そうだったか?」 鷹介にとって忘れられないあの日は、梅雨だというのに青空が綺麗だったから、名前を呼ばれた瞬間、飛雲雀で高く飛び上がりたい気持ちを抑えるのに必死だったから。 よく覚えてる。 「お前は忘れてっけどな」 憎まれ口のひとつくらい許してほしい。自分ばっかが一甲を好きなんだ、と思いたがるのを防ぐために。 「そういえば…お前との思い出はいつも晴れだったな」 「え?」 そうめんをすすりながら一甲がぽつりとつぶやいた。 3年前はいつも晴れていたような気がする。 きっとそれは… 「お前がいつも側にいて俺を陽の当たる所へと導いてくれたからだろう。ありがとう、鷹介」 柔らかく浮かぶ笑みに鷹介はニパッと笑い返した。 「ばぁか、お前の本心が『陽の当たる所』に行きたいって思ったからだろ。オレが何かしたわけじゃねぇよ」 そういう芯の強さに惹かれたのだ、と一甲はいつもながらに思う。 「鷹介」 「ん?」 「…呼んでみただけだ」 「なんだよ、それ!」 「鷹介」 「だぁかぁらぁ…!」 「呼びたいだけだ」 「っ!」 「鷹介…」 「…ばぁか」 先食っちまうぞ、と耳を赤くして鷹介がズルズルとそうめんをかきこむ。 「……俺の分まで平らげるな」 「お前がこっぱずかしいことすっからだろ」 これも小さなシアワセ。 終
久しぶりの甲鷹。相変わらず倦怠期知らずのようです。 2005.07.07 朝比奈朋絵
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