秘密会議 「明日だ!」と逃げていった一鍬から連絡があったのはその日の夜遅く。心なしか疲れた声をしていた。 明日の夕方おぼろ研究所で待てと言われ、なんとなく落ち着かない時間を過ごしふと疑問に思った。 今まであまり研究所に来たがらなかった一鍬が何故ここを指定したのか。 ザワ、と背中を駆け抜けた嫌な予感に思わず腰を浮かした。 「お、おぼろさん!オレ、ちょっと出てくる!」 「何言うてんの。あんたここで待ち合わせやないの?」 今日はそんなに集中していないらしく、オレの言葉に反応して声をかけてきた。ただし目はディスプレイに向かったまま。 「すぐ戻ってくるから、一鍬には待っててもらって!」 「は? 一鍬ちゃん? 一鍬ちゃんが来るんか? 七海やなくて?」 驚いた声をあげておぼろさんが振り向いた。 ていうかオレも驚いた。七海? 「え? だって待ち合わせって一鍬とだよ? なんで七海?」 ザワザワ。嫌な予感は「これ以上聞くな、早く逃げろ」と警告してくる。 「七海にアンタが逃げんよう見張ってて言われてん」 ヤバイ。何かわかんないけど絶対ヤバイ!こういう直感は当たるんだ。 とりあえずここから離れようとバッグを掴んだ瞬間。 「ごめーん鷹介!遅くなっちゃった…ってどこ行くの?」 見てましたと言わんばかりのタイミングで現れた七海はにーっこりと微笑み逃げようとしたオレを牽制した。 もうダメだ…。 短くない付き合いだ、この顔の七海に勝てた試しがない。こうなったら腹を括るしかないのか…。 ため息をついて「おかえり、七海」と手にしたバッグを元の位置に戻してソファに座りなおす。 「鷹介、コーヒー飲みたいな〜」 「あ、あたしもな〜」 はいはい、と落とした腰を再度持ち上げキッチンへと向かった。 「吼太、たすけて…」 カチャン、とコーヒーカップが置かれてふぅと一息。 七海が買ってきたケーキは昨日一鍬と入った店のもの。とてつもなく嫌な予感…。 「やっぱりここのケーキおいしい〜。ね、鷹介」 「ん? うん…」 「2日連続じゃイヤだった?」 ぶほっ! …ごほっ、ごほっっ!! 「やだ、鷹介大丈夫?」 そういって背中を擦ってくれるけど、七海、それって…。 「なぁ、もしかして…」 「うん、聞いたわよ、一鍬に」 ぜ〜んぶね、と心底楽しい、って顔で笑う。 「だいたい鷹介、相談する相手間違ってるわよ。なんで一鍬なのよ〜」 なんでって…他にいないと思うんだけど。 「それにしてもまだだったなんてね」 「………」 普通女の子がそういうこと言うか? しかも仮にもオレと一甲って男同士で世間的にはイレギュラーな関係なんだけど…。あ、自分で言ってヘコんできた。 「キスはしてるんでしょ? 最初一甲がいきなりしてきたんだっけ?」 殴って帰ってきたところで七海に捕まり、追究されたから今更っていえば今更なんだけど。 さすがにオレだってこんなこといくら七海だからって言えないって。 「そうだけどさ…」 「何今更恥ずかしがってるのよ。あ、ここじゃマズイわよね。鷹介の部屋に行こっか」 そういうとオレの腕を掴みグイグイと部屋まで連行された。 オレのベッドにどっかり腰掛けて脚を組んでいる七海に対して、一応はこの部屋の主であるオレはその足元でちんまり正座している。 「鷹介?」 ビックンッ!! 「やだ、何怯えてんの?別に今から実地で教えようってわけじゃないんだから〜」 キャラキャラ笑うが、こっそり怖いこと言ってるって。何がどう実地なんだよっ!! 「とりあえずどうヤるか知りたいんでしょ?」 「ヤ、ヤるって言うな〜っ!!!」 オレ、顔赤いって絶対!! なんで七海のが平然としてんだ?!っつか、なんで七海がそんなこと知ってんだ?! あぁ今ジャカンジャ出てくれないかな…。そしたらこの場から逃げられるのに。…ごめんなさい、伝説の後継者あるまじきことを考えました。 「もぉ鷹介。先に進まないじゃない。いい加減腹括りなさいよ。男でしょ!」 「…はい」 こうして七海の“愛され方”レクチャーが始まった。 「…ま、こんなとこかな。あとはコレ読んでおけば大丈夫よ」 はい、と手渡されたのは本屋さんの袋。 「何、これ」 「読めばわかるって。家に帰ってから開けてね」 明日早いから、と用事が済むなり部屋を出て行く。 「がんばって鷹介v 一甲にもよろしくね〜♪」 パタパタと引き返してきて投げキッス。…完全に楽しんでるよ、七海のヤツ。 はぁ、とため息吐いてさっきまで七海が言っていたことを反芻する。 目安はだいたい指3本。 まさかとは思ったけど、本当にソコに入れるんだ…。つか入るのかよ、指3本が! 焦らずちゃんと慣らせばそんなに痛くないっていうけど、七海、お前だってやったことねぇじゃん!…ないよ、な? ちゃんとゴムは着けるんだ〜、などなど。 自分の指を3本束ねてじっとみつめる。 「…一甲のってこれくらいなのかな…」 わーっ、何考えてんだよ、オレ!! …やばい、明日から一甲の顔見れないかも。 重い頭を振って深呼吸。 とりあえずオレも帰ろう。 傍らに置いてある紙袋と自分のバッグを持って立ち上がる。 家に帰ってメシ食って。お風呂に入りながら自分のと指3本を比べつつ考えるのはやっぱりアレのことばかり。 なんかすっげいやらしいヤツみたいじゃん、オレ。 風呂上りにスポーツドリンクを飲みながらベッドの上に投げ置いた紙袋を手に取る。 ガサガサと中身を取り出すと、それはいわゆる●モ雑誌と言われるもので。男性向け、女性向け(っていうのもヘンだけど)が1冊ずつ入っていた。 「な、な、な、七海のバカーッ!!!」 余分に知識だけ身に付けたら、かえって怖くなっちまった。 ごめん、一甲。もうちょっと…我慢してくれよな。 終
七海編です。これじゃ人間不信になりかねません凹 七海は七海なりの親切心(うち75%は好奇心?)でしたこと、ってことにしてあげてください。 2004.02.05 朝比奈朋絵
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