君の想い 私の願い


穏やかな日々は長く続かなかった。

戦いの場にゴウライジャーの姿を見ない日が増えたからだ。
シュリケンジャーがサソリを取り除いた後も一甲だけは胸を押さえ、顔を蒼白にさせている場面をよく目にした。
そのたびに鷹介は言いようのない不安に駆られるのだった。


「一甲、すげぇ苦しそうだよな」
研究所で怪我の手当てをしながらポツリ呟いた。
思いの外思いつめた表情の鷹介に、吼太もつられて神妙な顔つきになる。
「最近よく胸押さえてるの見るな。一甲って病気持ち…じゃなかったよな」
「あのゴウライジャーだぜ? 一甲だぜ? そんなの病気のほうが逃げちまうよ」
軽口を叩きながらも目は不安を隠せない。
「ねぇ鷹介。そんなに心配ならお見舞いに行ってくればいいじゃない」
「お見舞い? でもオレあいつらがどこに住んでるか知らねぇし」
「そんなの迅雷の谷に行けば一鍬が気づいて出てきてくれるでしょ」
「七海、そんな行き当たりばったりじゃ…」
「そっか! 七海、あったまいーっ!」
「でしょ、でしょーっ!」
「よ、鷹介?! 七海?!」
「じゃオレ今から行ってくる! 吼太、手当てサンキュな!」
一目でいい、一甲の姿が見られれば。厭味でもいい、彼の声が聞けるなら。
ジャケットを引っつかむと疾風のように研究所を飛び出してしまった。


「おーい」
いつもなら迅雷の陣地に足を踏み込むと姿を現す一甲も一鍬も今日は姿を見せない。
「一甲ーっ! 一鍬ーっ! おーい!!」
谷に着いて10分。さすがにもうダメかと思い、踵を返すとさほど遠くない木の幹に一鍬がもたれて立っていた。
「なんだ、一鍬。いたんなら返事くらいしろよ」
「何の用だ」
数日前の幾分和らいだ雰囲気は霧散していた。突き放すような瞳。
一瞬たじろいだが、ぐっと拳を握り気になっていることを問う。
「一甲、大丈夫か?」
予想通りの問いかけに一鍬は内心苦笑しながら、表面上は冷たく眼を細めた。
「貴様には関係ない」
「関係ねぇことねぇだろ! 仲間なんだし」
「用がないなら帰れ」
そう言い残すとスッと消えてしまった。
強気な鷹介が泣きそうな顔をしているのが一鍬の頭から消えない。

「兄者。言ってきたぞ」
「…すまん、一鍬。嫌な事をさせた」
膝の上で手を組み、顔を埋めたままの一甲。さきほどよりは顔色は良くなっているが依然眉間に皺を寄せたままである。
「…泣きそうな顔をしていた。兄者、本当に…」
「いいんだ」
一鍬の言葉を遮るように言い捨てる。その声は感情を殺しているためか低く掠れている。
「…兄者がそう言うのなら仕方ないが…」
納得できないが、兄の想いもわかるのでそれ以上なにも言えなくなってしまった。
今自分にできることは少しでも兄の痛みを和らげられるように薬草を煎じるだけ。それが情けなくて悔しくて一鍬も唇をかみ締めて立ち尽くす。


消え行くならば何も残しはしない。



満月まであと7日。




 終 





なかなか進みません。が、次ようやくサソリ話です。しかもサソリは掠めるだけであっという間に終わらせる予定(笑)


2003.10.28  朝比奈朋絵 











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