はぴねす


明朗快活、勇猛果敢、1つ、非道な悪事を憎み――な、俺にも・・・眠れない夜だってある。

そんなときにはまず熱いシャワーを浴びてから、熱っつーいホットミルク。レンジじゃなくて、ミルクパンで沸かす。ぶわっと噴いちゃうのはNG。ゆっくり沸かして、よっく見ていて、膜が張ってきたら火から下ろす。

いつもだったら好きな曲とかを聴くところなんだけど、こういうときには何にも付けないでゆっくりゆっくりミルクを飲む。マグを両手で包み込んで、ベッドの上でただぼんやりとしながら。


そして――お出掛けの準備。


お出掛け、つっても二つ向こうのドアに行くだけだからそんなにご大層なもんじゃないけど。持って行くものは愛用のマクラひとつだけだし。

部屋着のまんまでマクラひとつかかえドアをあけ、ちょっと回りを見回す。隣の相棒は今日夜勤だもんな。見つかってうるさく言われることはないから、今日は堂々と歩いていっちゃおう。



「――いらっしゃい、バン。」

ドアをノックするまえに部屋の主がぬっと顔を出し、にっこりと笑った。そしておいでおいでをして俺を中に招き入れてくれる。

「・・・何でいつも俺が来るのが分かるの?センちゃん。」

入り込んだ部屋の主の、大きくてちょっと猫背気味な背中を見ながら聞いてみるとセンちゃんはんん?と言いながら振り向いた。

「来るならそろそろ来る頃かなって。今日特に色々あったじゃない?バン眠れるかなってちょっと気になってたんだ。」

そしてもう一回背中を向けると部屋の隅に置いてあった紙袋を持ってきて、俺の前でがさごそと開け始めた。

「ね、パジャマ買ってきたんだ。俺とおそろいの色違い。バン、着てみない?」

出てきたのは薄い赤色のパジャマ。センちゃんが今着ている薄い緑色のやつと同じのらしい。

「えー・・・いいよ俺。これ気に入ってるし。」

「あ、じゃあナイトキャップだけでも・・・。」

「絶対ヤダ!」

俺が口を尖がらせているってのに、何でそんなに嬉しそうな顔して見るかなぁ。やっぱ良く分かんないや、センちゃんって。
ああ、残念だなぁと言う割には大して残念そうじゃない様子でパジャマをしまって紙袋をクローゼットにいれたセンちゃんは入れ替わりにそこから自分のナイトキャップを出してきた。ピエロが被っているような長い三角帽子の形で、先に白いボンボンが付いている薄い緑色のやつ。俺が被るのはヤなんだけどさ、何故かセンちゃんは似合って見えるんだよな。本人も気に入ってるみたいだし。

「さて、と。」

お気に入りの帽子を被って俺の顔を覗き込んだセンちゃんは、開いてんだか瞑ってんだか分かんない目でにこにこ笑って言った。

「いつもの、だろ?バン。」



「今日もホットミルクだったんだね。」

「え、分かる?」

「そりゃ・・・ね。口の端にミルクが付いてるから。」

センちゃんのベッドに二人して潜り込む。備え付けのベッドにしては大きいほうだと思うけれど、大の男が二人いっぺんに寝るにはちょっと狭いかな。センちゃんただでさえ大きいし。肩まで潜り込んだ俺のすぐ隣で、片肘ついてセンちゃんが俺の顔を覗き込んでくる。口端に付いていたらしいミルクを細くて長い親指で拭い取って、ぺろりと舐める。

そしてそのまま、神経質そうな白い大きな手を布団越しに俺の肩に置いて・・・センちゃんは静かに唇を動かした。

「one, two, three,・・・」

薄い唇から響きの良い、声。明かりを落とした部屋でそれはとても心地よく俺の耳に届いて・・・。


センちゃんの歌は、いつも気まぐれ。歌詞のあるときもあるし、無いときもある。
軽いポップみたいな時もあるし、ジャズに聞こえたり、レゲエとかラップもどきなんかもあったりなんかして・・・一度も同じ歌を歌ったことが無い。
ひょっとして、俺の気持ちに合わせてくれてんのかな?と思うくらいそれはいつもすんなり俺の中に入ってきて・・・俺も知らないところで張り詰めていたものをゆっくり、ゆっくり、解してくれる。

何だっけ?

昔聞いた歌にあったかな・・・上等の催眠薬。あれは・・・穴のあいたキャベツだったっけ?レタスだったっけ?ひとりじめしちゃうやつ・・・

そんな他愛も無いことばかり考えながらセンちゃんの歌をきいているうちに、とろとろと溶けるように思考がぼんやりしてきて・・・。最後に感じるのは、俺の前髪を優しく掻き揚げる指の感触と、ちょん、と額に触れる唇の感触。それから


「おやすみ・・・」


耳元でそっと囁いてくれる大好きな、声。





俺だけの―――上等の睡眠薬―――ひとりじめ・・・





Fin.





Ikuさまから頂いた(半強奪)デカ・緑赤小説ですー♪ Ikuさん、掲載に快諾してくださって本当にありがとうございましたv
元ネタはキャラソンCDです。I藤くんは柔らかな声で歌われます。たしかに子守唄にはいいカンジv そしてIkuさんの穏やかで温かい文章と相まって癒されますーv
ちゃっかりお揃いのパジャマを用意してたり、ナイトキャップを被せようとするところは「やっぱりセンちゃん!」ですが。
一緒のベッドで寄り添って眠る2人が恋人<親子みたいでかわいいです。
あきれることに朝比奈は犬赤onlyではないようです。いわゆる「赤総受」って感じのようで…。節操ナシですね、アハハ。なんでも来い!どんと来い!
Ikuさま、ありがとうございましたvv







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